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【アルフォンス・ミュシャ】歴史は名もなき人たちの営みで作られる

【アルフォンス・ミュシャ】歴史は名もなき人たちの営みで作られる

ミュシャ

ミュシャ

これらの華美な絵、日本人でも多くの人は見覚えがあるでしょう。

作者は、かつてパリで一世を風靡した広告ポスター画家で、チェコ出身のアルフォンス・ミュシャ(1906年 - 1939年)です。
彼は、商品そのものではなく華麗な夢を売るという新しい手法で広告業界に革命を起こし成功を収めました。

しかし、オーバーワークで疲労気味だったある日の真夜中、彼はアトリエに一人きりでいた時にふと思います。
「私の故郷の人々がどぶ水でのどの渇きを癒しているときに、私は貴重な時間をこんなことに費やしていいのか。」

彼はチェコの人々のために何かをしたいという衝動に駆られて、20年暮らしたパリを突然離れて故郷へ戻ったのでした。


今回見ていただきたいのは、その後の彼の作品です。
パリで描いていた上の作品とは画風が全く違います。

ヴィートコフ山の戦いの後

ヴィートコフ山の戦いの後

この絵のタイトルは『ヴィートコフ山の戦いの後』。
チェコの民衆がハプスブルク家の部隊と戦って撤退させた場面です。左下に勝利した側の女性兵士が描かれていますが、彼女に喜びの表情はありません。

チェコは苦難の歴史を歩んできた国でした。
16世紀からドイツ系の貴族であるハプスブルク家の強大な帝国に制圧され、17世紀にはチェコの民衆が自由を求めて反乱を起こしたが失敗、首謀者たちは全員処刑されました。
その後、チェコは暗黒時代を迎えます。独自の文化は抑圧され、ドイツ語が公用語になりました。
ミュシャは、このようなチェコおよびスラヴ民族の歴史を描くことに後半生のすべてを注ぎました。それらの作品は「スラヴ叙事詩」と呼ばれています。


ミュシャが描く「スラヴ叙事詩」には大きな特徴があります。

その特徴の一つは、一枚一枚の絵がこんなに大きいことです。

ミュシャ展


次に、特徴の二つめですが、

ベツレヘム礼拝堂で説教をするヤン・フス師

この絵は、ハプスブルク家の支配に抵抗するために宗教改革を唱えた男が壇上でスピーチしている場面を描いた作品です。その男は後にチェコの英雄と言われましたが、この絵を一見すると誰がこの場の主役なのかよくわかりません。


東ローマ皇帝として戴冠するセルビア皇帝ステファン・ドウシャン

こちらはセルビア皇帝の戴冠式を描いた作品ですが、やはり主役であるはずの皇帝は中央に小さく描かれていて探すのが大変です。

ミュシャは、絵の登場人物一人一人の顔つきやポーズを徹底的に描くことにこだわりました。全員の個性や人生を大切に描こうとしたのです。そのために、大きなカンバスが必要でした。

歴史は皇帝や英雄のものではなく、そこにいる一人一人が作り上げたものなのだ。
……彼は、自分の絵を通してこう訴えています。
一見して主役が誰なのかわからない絵は、無名の民衆一人一人が歴史の主役であることを物語っているのです。


チェコの苦難の歴史を描き続けたミュシャでしたが、歴史は繰り返します。彼が生きていた時代にも同じような悲劇が起きて、彼自身がそれに巻き込まれてしまうのです。
1939年、ナチスがチェコに侵攻し、チェコの政治や文化の弾圧を始めました。
ミュシャは危険な愛国主義者とみなされてナチスの秘密国家警察ゲシュタポに逮捕され、獄中で最期を遂げたのでした。


最後に紹介するのは、ミュシャの未完成作品です。

スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い

この絵のタイトルは『スラヴ菩提樹の下でおこなわれるオムラジナ会の誓い』。
女神のもとに、自由と平和を求め、連帯を誓い合う若者たちが表現されています。この作品がもし完成していたら、彼がパリで華やかな絵を描いていた頃の作風に近いものになっていたのではないでしょうか。

ミュシャは、このような言葉を残しています。
「私の作品の目的は、破壊ではなく、常に橋を架けるということにあった。」

自由と平和、……ミュシャの作品の中では未完に終わってしまった人類の理想のあり方。
この作品に込められた思いの完成は、現代に生きる私たちに託されたのです。


史上初、スラヴ叙事詩がチェコから国外に搬出されました。
東京・六本木の国立新美術館(東京都港区六本木7-22-2 )で、6月5日まで「ミュシャ展」が開催されています。

開館時間  10:00-18:00
金曜日および4月29日(土)-5月7日(日)は20:00まで
入場は閉館の30分前まで

※使用した画像はネットから転用させていただきました。

(やしろたかひろ)

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